MEMORANDUM

ファンド法務NEWS第8回 – 令和元年仮想通貨法・金商法等改正③ – Security Token Offering(STO)と金商法 Vol.1

どうも。弁護士の後藤慎吾です。

9月9日にセミナーインフォ社主催で「金融商品取引業者の経営陣・事業部門が理解すべき金融コンプライアンスの基礎知識【14選 】」と題するセミナーを行います。以下は案内文の抜粋です。

コンプライアンス・リスク管理はコンプライアンス部門等の管理部門に任せればよいという考えは間違いです。
金融庁のコンプライアンス・リスク管理基本方針では、金融機関のコンプライアンス・リスク管理の向上のために、経営陣に対して、「コンプライアンス・リスク管理は、まさに経営の根幹をなすものである」との認識に基づいた経営目線での対応を、事業部門の役職員に対しては、「コンプライアンス・リスク管理の責任を担うのはまさに自分自身である」という主体的・自律的な意識の下での業務実施を求めています。また、金融当局の検査・監督の場面においても、経営陣・事業部門役職員は自らの言葉で検査官等と深度ある対話を行う必要があります。しかし、金融商品取引業者の経営陣・事業部門役職員の中には自らの金融コンプライアンスリテラシーについて不安を覚えている方も多いようです。そこで、本セミナーでは、金融商品取引業者の経営陣・事業部門役職員を対象として、以下のトピックを取り上げて、金融コンプライアンスの考え方や基礎知識を体系的に解説することで、対象者の金融コンプライアンスリテラシーを引き上げることを目的とします。

金商法関係のセミナー講師をすると、来ていただける方の多くは法務・コンプライアンス部門などの管理部門の方なのですが、今回、このようなセミナーを催すことになった理由としては、顧客との接点となる経営陣や事業部門の役職員にこそコンプライアンスの基本的な考え方を理解していただく必要があるのではないかという問題意識があります。今、セミナーの構想を練っているところですが、金融機関に対する近時の行政処分事例などを検証する中で金融コンプライアンスの本質をあぶり出せればと思っています。参加費は1名あたり35,050円だそうです。参加者の方々にご満足いただけるよう夏休み返上でがんばります。

さて、ファンド法務NEWS第8回は引き続き、令和元年仮想通貨法・金商法等改正についてです。前回のMEMOでは、Initial Coin Offeringで発行されるトークンには様々な種類のものがあり、「仮想通貨交換業等に関する研究会」報告書 (平成30年12月21日)では、トークンを以下の3類型に分類していることをご説明しました。

①投資型 発行者が将来的な事業収益等を分配する債務を負っているとされるもの
②その他権利型 発行者が将来的に物・サービス等を提供するなど、上記以外の債務を負っているとされるもの
③無権利型 発行者が何ら債務を負っていないとされるもの

今回は、①の投資型のトークンのICOにフォーカスして、それが日本法でどのように規制されるのかを見ていきましょう。①の投資型のトークンのICOは、Security Token Offering(STO)とも呼ばれますので、以下ではSTOと略称します。

STOと金商法

以前から、STOについては、金商法の規制の適用があるのではないか、といわれてきました。金融庁も平成29年10月27日に「ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~」というペーパーを公表し、そこでICOに関する規制について以下のように説明していました。

ICOの仕組みによっては、資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となります(注)。ICO事業に関係する事業者においては、自らのサービスが資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となる場合には、登録など、関係法令において求められる義務を適切に履行する必要があります。登録なしにこうした事業を行った場合には刑事罰の対象となります。
(注)ICOにおいて発行される一定のトークンは資金決済法上の仮想通貨に該当し、その交換等を業として行う事業者は内閣総理大臣(各財務局)への登録が必要になります。また、ICO が投資としての性格を持つ場合、仮想通貨による購入であっても、実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象となると考えられます。

では、そもそも、金商法はどのような行為を規制の対象としているのでしょうか?ここでは業者規制について見ていくことにします。

STOと金融商品取引業

金商法の業者規制の具体的な仕組みについては本MEMOの別連載の「ファンド法務Q&A」で取り上げようと思いますので、ここではごくごく簡単にご説明します。まず、金商法第2条第8項のうちSTOに関係するところだけを以下に抜粋します。

この法律において「金融商品取引業」とは、次に掲げる行為(・・・)のいずれかを業として行うことをいう。
・・・
七 有価証券(次に掲げるものに限る。)の募集又は私募
イ ・・・
ヘ 第二項の規定により有価証券とみなされる同項第五号又は第六号に掲げる権利
ト ・・・

従って、金商法第2条第8項第7号ヘによって、「金商法第2条第2項第5号又は第6号に掲げる権利の募集又は私募を業として行うこと」は「金融商品取引業」に該当することになります。そして金商法第29条は以下の通り規定しています。

(登録)
第二十九条 金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。

従って、「金商法第2条第2項第5号又は第6号に掲げる権利の募集又は私募を業として行う」ためには内閣総理大臣(権限の委任があり実際には財務局長)の登録を受ける必要があります。そして、「金融商品取引業者」とは、第29条の規定により内閣総理大臣の登録を受けた者をいうと定義されており(金商法第2条第9項)、金商業者は金商法の様々な規制に服することになります。

STOの金商法上の規制については、STOという行為の「金商法第2条第2項第5号又は第6号に掲げる権利の募集又は私募」への該当性との関係で議論されてきました。つまり、STOで発行される投資型のトークンは「金商法第2条第2項第5号又は第6号に掲げる権利」に該当するのではないか、ということが問題となります。

そうです。STOに対する金商法の適用の有無を論じるにあたっては、ファンド実務ではおなじみのファンド持分(集団投資スキーム持分)を定めた金商法第2条第2項第5号・第6号が問題になるのです。きりがよいので今回のMEMOは一旦ここで終わりにして、次回は金商法第2条第2項第5号・第6号に規定されるファンド持分とは何か、について見ていきましょう。

ではでは。

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