MEMORANDUM

ファンド法務NEWS第7回 – 令和元年仮想通貨法・金商法等改正② – ICOとは何か

どうも。弁護士の後藤慎吾です。

前回のMEMOでは、令和元年仮想通貨法・金商法等改正の概要についてご説明しましたが、今回のMEMOでは、改正法で規制の整備がなされたInitial Coin Offering(「ICO」)とはどういうものか、についてみていきます。

ICOとは

ICOは、法律上の用語ではなく、一般的な通称ですが、この通称に関する日本で最もオーソリティのある説明は、前回のMEMOでご紹介した「仮想通貨交換業等に関する研究会」報告書 (平成30年12月21日)(「研究会報告書」)のものではないかと思います。そこでは、以下のように説明されています。

ICO(Initial Coin Offering)について、明確な定義はないが、一般に、企業等がトークンと呼ばれるものを電子的に発行して、公衆から法定通貨や仮想通貨の調達を行う行為を総称するものとされている。

これまで企業が資金調達を行う場合には、①企業が株式や社債を発行し、それを購入した投資家から対価の払込みを受ける(直接金融)、又は②銀行等の金融機関から金銭を借り入れる(間接金融)といった方法によるのが一般的でしたが、ICOはこれらの方法以外の新たな資金調達の手法として注目されました。イメージとしては以下のようになります。

出典:金融庁「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための 資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」 説明資料(平成31年3月)4頁

当然のことですが、企業等(「発行体」)がICOを行い資金調達の目的を達成するためには、投資家にICOで発行されるトークンを購入してもらう必要があります。ですので、発行体は、多くの場合で、トークンに価値を持たせるために、投資家が取得したトークンを、発行体がICOによって調達した資金を元手として開発したプロダクトの利用料の支払手段として利用できるようにするなどの仕組みを採用しています。

また、ICOの発行体が、投資家に対してトークンの購入の勧誘をする際には、トークンの発行条件・内容や開発予定のプロダクトの内容・開発スケジュールなどを記載した電子書面(ホワイトペーパー(Whitepaper)と呼ばれます。)をホームページやSNSなどに掲示し、投資家にこれらの情報を周知するのが一般的です。投資家はホワイトペーパーの情報などを参考にしてトークンの購入の当否を判断し、購入する場合には、発行体等にアカウントを開設したうえで、通常は仮想通貨を対価としてトークンを購入します。トークンの保有・移転はすべてブロックチェーン上で記録されることになります。

ICOで発行されるトークンのほとんどは、トークンの販売活動が終了したのちに、投資家同士がプラットフォーム上で売買できるようになること(「上場」と呼ばれます。)が想定されています。多くの投資家は、実際にプロダクトを利用するためにトークンを購入するというよりは、トークンの値上がりを見込んで購入するため、トークンが上場し、流動性を与えられることがICOが成立するための事実上の前提条件となっています。

ICOによる調達額等の推移

ウェブサイト「ICODATA.IO」の統計によれば、年度ごとのICOによる調達額総額及びICOの件数は以下のようになっています。2017年に急激に増加しており、2018年はそれを上回りました。このICOバブルともいえる状況が生じた理由としては、①あるビジネスアイデアが実際に事業化されていない段階でInitial Public Offering(IPO。公募による新株発行)を行うことは事実上不可能であること、②IPOを行う場合に各国の証券法で要求される厳格な情報開示がICOについては不要であるとの整理の下でコンプライアンスコストの軽減ができると考えられたこと、③ICOの場合にはインターネットを通じて全世界の投資家に容易にリーチできることなどが考えられます。ちなみに、IPOでの調達額総額は、PwCのGlobal IPO Watch Q4 2018によれば、2017年は2091億ドル、2018年は2216億ドルと説明されています。

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年(7月2日現在)
調達額総額 $16,032,802 $6,084,000 $90,250,273 $6,226,689,449 $7,812,150,041 $346,089,000
ICO件数 2 3 29 875 1253

2018年9月末時点の少し古い情報ですが、ICOによる調達額上位20プロジェクトは以下の通りです。多くは海外の案件ですが、14位のQASHと17位のCOMSAは日本の仮想通貨交換業者の案件です。

出典:「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第8回)配布資料3(説明資料(事務局))3頁

他方で、以下のグラフは、各月のICOによる調達額を示したものです。これを見れば明らかですが、近時はICOによる調達額が激減しています。現在のICOを巡る動向が今後も継続するとすれば、2019年のICOによる調達額総額は2018年の調達額総額の10分の1を下回ることが予想されます(ただし、FacebookによるLibraの発表があったことでICOマーケットにも違った動きが生じるかもしれませんが)。

出典:BitMEX Research, icodata.io

ICOの問題点

ICOによる調達額総額の急激な減少の理由としては、①ビットコインやアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)の価格低迷(最近はまた上昇傾向にありますね。)、②世界的な規制強化の流れやICOに関する摘発事例の出現、③既存のICO事案でトークンを購入した投資家が、上場後のトークンの価格の下落やプロジェクトの失敗、詐欺的なICOなどによって損害を被っている例が多いことなどが考えられます。③の点に関しては、研究会報告書は、以下のように指摘しています。

ICO については、グローバルに資金調達ができる、中小企業が低コストで資金調達ができる、流動性を生み出せるなど、既存の資金調達手段にはない可能性があるとの評価もなされている一方で、以下のような問題を指摘されることも多い。
ICOを有効に活用したとされる事例があまり見られない
・ 詐欺的な事案や事業計画が杜撰な事案も多く、利用者保護が不十分である。
・ 株主や他の債権者等の利害関係者の権利との関係も含め、トークンを保有する者の権利内容に曖昧な点が多い
・ 多くの場合、トークンの購入者はトークンを転売できれば良いと思っている一方、トークンの発行者は資金調達ができれば良いと思っており、規律が働かず、モラルハザードが生じやすい

ICOの分類

ICOに上記のような問題があるとなると、トークンの購入者を保護するために何らかの規制があってもよさそうなものです。ただ、十把一絡げにトークンといってもその内実は様々なものがあります。研究会報告書はトークンについて以下のように分類しています。

①投資型 発行者が将来的な事業収益等を分配する債務を負っているとされるもの
②その他権利型 発行者が将来的に物・サービス等を提供するなど、上記以外の債務を負っているとされるもの
③無権利型 発行者が何ら債務を負っていないとされるもの

このように、研究会報告書では、トークンを、(a)トークンの保有者が発行者に対して何らかの権利を有するのか(①「投資型」及び②「その他権利型」が「権利を有する」に該当し、③「無権利型」が「権利を有しない」に該当)、(b)トークンの保有者が発行者に対して権利を有するとした場合に、当該権利はどのような内容なのか(①「投資型」か、それ以外(②「その他権利型」)かで分類)、の2つの基準によって分類していますが、これは日本の規制法の枠組みに平仄を合わせたものといえます。

では、次回以降のMEMOでは、上記のトークンの分類ごとに、どのような日本法による規制があるのかについて見ていくことにしましょう。

ではでは。

関連記事一覧