MEMORANDUM

ファンド法務NEWS第6回 – 令和元年仮想通貨法・金商法等改正① – 改正法の概要

どうも。弁護士の後藤慎吾です。

このウェブサイトを立ち上げた当初は、週に1回は記事をアップしたいと思っていたのですが、日々の雑務に忙殺されているとなかなかそういうわけにもいきませんね。
私が司法修習生の時に弁護修習で3ヵ月間ご指導いただいたコーポレートガバナンスや危機管理の分野で著名な山口利昭先生が毎日のようにブログ「ビジネス法務の部屋」を更新されているのを常々拝見していたので、週1回くらいなら私も、と軽く考えていたのですが、単に山口先生が超人的なお方なだけのことがよくわかりました。。

さて、本年5月31日に「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」(「令和元年改正法」)が成立しました。令和元年改正法ではInitial Coin Offering(「ICO」)に関する新たな規律が設けられており、ファンド法務にも影響を及ぼすことが予想されます。ICOは仮想通貨を利用したファイナンスであって、ファンド法務とは関係ないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそうではありません。

本MEMOでは、これから何回かに分けて、ICOに関する法規制について解説していきたいと思います。今回は令和元年改正法について概観してみましょう。まずは、「仮想通貨交換業等に関する研究会」報告書(「研究会報告書」)から。

「仮想通貨交換業等に関する研究会」報告書

仮想通貨交換業等に関する研究会(「研究会」)は、平成30年1月に発生したコインチェック事件や、その後の行政当局の立入検査を通じて、多くの仮想通貨交換業者の内部管理態勢等の不備が把握されたことなどを踏まえ、仮想通貨交換業等を巡る諸問題について制度的な対応を検討するため、同年3月に設置されました。研究会では、11回に渡り討議を行い、同年12月21日に研究会報告書を公表しています。その項目としては以下のものがあり、研究会報告書では、各項目について、当時の状況を踏まえた問題点を指摘し、それに対する対応のあり方について提言がなされています。

1 仮想通貨交換業者を巡る課題への対応
2 仮想通貨の不公正な現物取引への対応
3 仮想通貨カストディ業務への対応
4 仮想通貨デリバティブ取引等への対応
5 ICOへの対応
6 業規制の導入に伴う経過措置のあり方
7 「仮想通貨」から「暗号資産」への呼称変更

また、5の「ICOへの対応」については、以下の項目のもとに、ICOに関する当時の状況とあるべき規制の内容について整理しています。

1 ICO の現状と対応の方向性 ア.ICO による資金調達の現状
イ.ICO に係る規制の現状
ウ.ICO への対応の方向性
2 ICO に係る規制の内容 ア.投資に関する金融規制を要する ICO に係る規制の内容
(ア)情報提供(開示)の仕組み
(イ)第三者による事業・財務状況のスクリーニングの仕組み
(ウ)公正な取引を実現するための仕組み
(エ)トークンの流通の範囲に差を設ける仕組み
イ.決済に関する金融規制を要する ICO に係る規制の内容

令和元年改正法の多くの条項は、研究会報告書で提言された内容を踏まえて策定されています。令和元年改正法の各条項の制度趣旨などについては、今後、金融当局の立案担当者の旬刊商事法務などでの論文や逐条解説本、関連改正政省令に関するパブリックコメント手続での金融庁の考え方などで説明されることが予想されますが、現在のところ、それを最もよく知ることができる資料は研究会報告書ということになろうかと思います。

令和元年改正法の概要

以下の資料は令和元年改正法の概要について説明した金融庁の資料です。同種の資料の中で、これが一番コンパクトにまとまっているものなので引用しておきます。

令和元年改正法の本則において改正の対象となるのは、資金決済法の他に、金商法、金販法、銀行法、保険業法など13本の法律に及びます。上記資料の「暗号資産の交換・管理に関する業務への対応」が、資金決済法の改正に、「暗号資産を用いた新たな取引や不公正な行為への対応」が、金商法の改正に、「その他情報通信技術の進展を踏まえた対応」が、銀行法、保険業法などの改正にそれぞれ対応します。

令和元年改正法による改正の対象となる法律ごとの主な改正内容は以下の通りです。なお、令和元年改正法は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとされており(附則第1条)、実際には来年春に施行されるものと予想されます。また、令和元年改正法では改正の枠組みが示されているだけであり、その具体的な内容の策定は政省令に委任されていることが多いです。現在、金融当局において関連政省令案の策定作業が行われており、今年の秋又は冬にその公表がなされるとともにパブリックコメント手続が行われるものと思います。

資金決済法

⑴ 定義の変更

(ア)「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」に変更(第2条関係)

研究会報告書では、①最近では、国際的な議論の場において、“crypto-asset”(「暗号資産」)との表現が用いられつつあることや、②現行の資金決済法において、仮想通貨交換業者に対して、法定通貨との誤認防止のための顧客への説明義務を課しているが、なお「仮想通貨」の呼称は誤解を生みやすい、との指摘もあることから、法令上、「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」に変更することが考えられるとしていました。

(イ)暗号資産の定義からの金商法で規定する「電子記録移転権利」の除外(第2条関係)

ICOにおいて発行されるトークンが暗号資産と電子記録移転権利の双方に該当する場合があることを前提として、かかる場合には、当該トークンは電子記録移転権利にのみ該当することとし、金商法のみが適用され、資金決済法は適用されないものと整理されました。

(ウ)暗号資産交換業の定義への、暗号資産の交換等に関しない暗号資産の管理を業として行うこと(暗号資産カストディ業務)の追加(第2条関係)

現行の資金決済法上、仮想通貨の売買・交換やそれらの媒介・取次ぎ・代理「に関して」顧客の仮想通貨を管理することは、仮想通貨交換業に該当しますが、仮想通貨の売買等は行わないが、顧客の仮想通貨を管理し、顧客の指図に基づき顧客が指定する先のアドレスに仮想通貨を移転させる業務(「仮想通貨カストディ業務」)は、仮想通貨の売買等を伴わないため、仮想通貨交換業には該当しません。しかし、①仮想通貨カストディ業務については、サイバー攻撃による顧客の仮想通貨の流出リスク、業者の破綻リスク、マネーロンダリング・テロ資金供与のリスク等、仮想通貨交換業と共通のリスクがあると考えられること、及び、②仮想通貨はインターネットを介して容易にクロスボーダーで移転が可能であり、国際的に協調した対応が重要であるところ、2018年10月に、仮想通貨カストディ業務を行う業者についても、マネーロンダリング・テロ資金供与規制の対象にすることを各国に求める旨の改訂FATF 勧告が採択されたことから、研究会報告書では、仮想通貨カストディ業務についても一定の規制を設けた上で、業務の適正かつ確実な遂行を確保していく必要があると指摘されていました。

⑵ 暗号資産交換業の登録拒否事由への、認定資金決済事業者協会に未加入の法人であって、当該協会の規則に準ずる内容の社内規則を作成していないもの等の追加(第63条の5関係)

現在仮想通貨交換業者は19業者存在していますが、そのすべてが、資金決済法第87条に基づく認定資金決済事業者協会である一般社団法人日本仮想通貨交換業協会の会員となっています。法律上は、仮想通貨交換業者の認定資金決済事業者協会への加入義務はありませんが、暗号資産交換業の登録拒否事由に、認定資金決済事業者協会に未加入の法人であって、当該協会の規則に準ずる内容の社内規則を作成していないもの等を追加することで、認定資金決済事業者協会への加入を促すとともに、認定協会未加入の暗号資産交換業者に対しても自主規制規則に準じた体制整備を求める観点から、暗号資産交換業者について、かかる登録拒否事由を設けることとされました。第一種金融商品取引業者、第二種金融商品取引業者及び投資運用業者において同様の登録拒否事由(金商法第29条の4第1項第4号ニ)があるのが参考にされたものと考えられます。

⑶ 暗号資産交換業者の、その取り扱う暗号資産の名称又は業務の内容及び方法を変更する場合の事前届出義務(第63条の6関係)

研究会報告書では、移転記録が公開されず、マネーロンダリング等に利用されるおそれが高い追跡困難なものや、移転記録の維持・更新に脆弱性を有するものといった問題がある仮想通貨に対する対応として、現状、行政当局に対する事後届出の対象とされている仮想通貨交換業者が取り扱う仮想通貨の変更を事前届出の対象とし、行政当局が、必要に応じて、認定協会とも連携しつつ、柔軟かつ機動的な対応を行い得る枠組みとすることが適当であるとしていました。

⑷ 暗号資産交換業者の、広告及び勧誘に際しての虚偽表示の禁止その他の暗号資産交換業の広告等に関する規定の整備(第63条の9の2、第63条の9の3関係)

仮想通貨交換業者による積極的な広告等により、仮想通貨の値上がり益を期待した投機的取引が助長されており、また、そうした取引を行う顧客の中には、仮想通貨のリスクについての認識が不十分な者も存在する、との指摘があることから、顧客によるリスクの誤認や投機的取引の助長を抑止する観点から、暗号資産交換業者に対する広告・勧誘ルールが定められました。

⑸ 暗号資産交換業者の、利用者に信用を供与して暗号資産の交換等を行う場合の、その契約に係る情報の提供等の措置義務(第63条の10関係)

顧客が業者に保証金として金銭や仮想通貨を預託し、業者指定の倍率を上限に業者から仮想通貨を借り入れ、それを元手として仮想通貨の売買・交換を行う取引(「仮想通貨信用取引」)自体に対する金融規制は現在は設けられていませんが、研究会報告書では、仮想通貨信用取引は、元手資金(保証金)にレバレッジを効かせた取引を行う点で、仮想通貨の証拠金取引と同じ経済的機能やリスクを有することから、仮想通貨信用取引については、仮想通貨の証拠金取引と同様の規制(仮想通貨の証拠金取引の規制については金商法の改正内容1.(2)参照)の対象とすることが適当であるとされていました。

⑹ 利用者の財産の保全

(ア)暗号資産交換業者の、利用者の金銭の信託義務(第63条の11関係)

仮想通貨交換業者が管理する顧客の金銭(「受託金銭」)については、資金決済法上、自己資金とは別の預貯金口座又は金銭信託で管理することが求められていますが、制度の施行時と比べて、受託金銭の額が高額になってきているほか、検査・モニタリングを通じて、仮想通貨交換業者による受託金銭の流用事案も確認されていることから、研究会報告書では、受託金銭については、流用防止及び倒産隔離を図る観点から、仮想通貨交換業者に対し、信託義務を課すことが適当とであるとされていました。

(イ)暗号資産交換業者の、原則として利用者の暗号資産を利用者の保護に欠けるおそれが少ない方法で分別管理するべき義務(第63条の11関係)

受託仮想通貨の外部流出の危険を低減するために、受託仮想通貨の移転に必要な秘密鍵をコールドウォレット(外部のネットワークと接続されていないウォレット)で管理することが有効であると考えられており、「利用者の保護に欠けるおそれが少ない方法」の内容は今後内閣府令で定められることが予定されていますが、コールドウォレットでの管理が規定されることが予想されます。

(ウ)暗号資産交換業者の、利用者の保護に欠けるおそれが少ない方法以外の方法で管理する利用者の暗号資産と同種同量の暗号資産(「履行保証暗号資産」)を自己の財産として保有し、利用者の保護に欠けるおそれが少ない方法で分別管理するべき義務(第63条の11の2関係)

日々の流通に要する一定量の受託仮想通貨については、顧客からの移転指図に迅速に対応するため、一般にコールドウォレットよりもセキュリティリスクが高いとされるホットウォレット(外部のネットワークと接続されているウォレット。「利用者の保護に欠けるおそれが少ない方法以外の方法」はホットウォレットを意味していると考えられます。)で秘密鍵を管理する必要があり、その必要性は認めたうえで、流出事案が生じた場合の顧客に対する弁済原資の確保のために、暗号資産交換業者の、履行保証暗号資産のコールドウォレットでの分別管理義務を規定したものです。

⑺ 暗号資産交換業者に暗号資産の管理を行わせている利用者の、当該暗号資産交換業者が管理する利用者の暗号資産及び履行保証暗号資産について他の債権者に先立ち弁済を受ける権利の新設(第63条の19の2、第63条の19の3関係) 

暗号資産交換業者に暗号資産の管理を行わせている利用者は、暗号資産交換業者との間の、当該暗号資産交換業者が暗号資産の管理を行うことを内容とする契約に基づいて、当該暗号資産交換業者に対して、暗号資産の移転を目的とする債権を有することになりますが、仮想通貨交換業者の破綻時においても受託仮想通貨の顧客への返還が円滑に行われるようにする観点から、このような優先弁済権が認められました。

金商法

1.暗号資産を用いたデリバティブ取引や資金調達取引に関する規制の整備

⑴ 金融商品の定義への暗号資産の追加・暗号資産を用いたデリバティブ取引の規制対象化(第2条第24項関係)

顧客が業者に証拠金として金銭や仮想通貨を預託し、業者指定の倍率を上限にレバレッジをかけて仮想通貨の取引を行った後に反対取引を行い、金銭や仮想通貨の差分の授受により決済を行う取引(仮想通貨の証拠金取引)を含む、仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引(「仮想通貨デリバティブ取引」)は、現状、我が国においては金融規制の対象とはされていません。研究会報告書では、2017年度において、仮想通貨デリバティブ取引は、仮想通貨交換業者を通じた国内の仮想通貨取引全体の約8割を占めている中、仮想通貨交換業者におけるシステム上の不備やサービス内容の不明確さ等に起因する利用者からの相談が、金融庁に対して相当数寄せられている現状を踏まえ、仮想通貨デリバティブ取引については、これを禁止するのではなく、適正な自己責任を求めつつ、一定の規制を設けた上で、利用者保護や適正な取引の確保を図っていく必要があると指摘していました。令和元年改正法施行後は、金商法第2条第24項に規定されている「金融商品」の定義に暗号資産が加わることにより、暗号資産を用いたデリバティブ取引が金商法の規制対象取引となり、そのうち、店頭デリバティブ取引を業として行うためには第一種金融商品取引業の登録が必要になり、市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引を業として行うためには第二種金融商品取引業の登録が必要になります。

⑵ 金融商品取引業者等が行う暗号資産を用いたデリバティブ取引に関連する業務に関する説明義務等の規定の整備(第43条の6関係)

研究会報告書では、仮想通貨デリバティブ取引は、仮想通貨の特性についての顧客の認識不足、問題がある仮想通貨の取扱い等、仮想通貨の現物取引と共通の課題が内在した取引であると整理されており、仮想通貨の特性を踏まえて仮想通貨交換業者に求められる対応は、仮想通貨デリバティブ取引を業として行う者に対しても同様に求めることが適当であるとしていました。そこで、改正後の金商法では第3章第2節第6款として「暗号資産関連業務に関する特則」を新設し、「暗号資産関連業務」を「暗号資産に関する内閣府令で定める金融商品取引行為(「暗号資産関連行為」)を業として行うこと」と定義したうえで、①金融商品取引業者等は、暗号資産関連業務を行うときは、内閣府令で定めるところにより、暗号資産の性質に関する説明をしなければならないとし(改正後の金商法第43条第1項)、また、②金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、その行う暗号資産関連業務に関して、顧客を相手方とし、又は顧客のために暗号資産関連行為を行うことを内容とする契約の締結又はその勧誘をするに際し、暗号資産の性質その他内閣府令で定める事項についてその顧客を誤認させるような表示をしてはならないとされています(同条第2項)。

⑶ 電子記録移転権利に関する規律の新設

(ア)収益分配を受ける権利等のうち、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示されるもの(「電子記録移転権利」)を、第一項有価証券に分類・企業内容等の開示制度の対象化(第2条第3項・第8項、第3条関係)

金商法では、有価証券を、広く流通する蓋然性が高いと考えられる有価証券(第一項有価証券)とその蓋然性が低い有価証券(第二項有価証券)とに分類し、第一項有価証券は原則として同法の開示規制の対象とするのに対して、第二項有価証券は原則として開示規制の対象としないものとされています。研究会報告書では、ICOにおいて発行されるトークンが表章する権利が収益分配を受ける権利等である場合には、当該権利等(「トークン表示権利」)は、事実上多数の者に流通する可能性があるため、第一項有価証券と同様に整理することが適当であるとしていました。

(イ)電子記録移転権利の売買等を業として行うことの第一種金融商品取引業に係る規制の対象化(第28条関係)

金商法では、有価証券を取り扱う業者は、取り扱う有価証券の流通性の高低に応じ、第一種金融商品取引業者第二種金融商品取引業者に分けられ、業規制が課されています。研究会報告書では、ICO におけるトークン表示権利を取り扱う業者は、事実上多数の者に流通する可能性がある権利を取り扱うことから、第一種金融商品取引業者と同様に整理した上で、当該業者に対し、発行者の事業・財務状況の審査を適切に実施していくことを求めることが適当であるとしていました。

⑷ 収益分配を受ける権利を有する者が出資した暗号資産等を金銭とみなす規定の新設(第2条の2関係)

現行の金商法では、トークン表示権利が仮想通貨で購入された場合には、必ずしも規制対象とはならないと考えられています。これについて、研究会報告書では、購入の対価が私的な決済手段である仮想通貨であったとしても、法定通貨で購入される場合とその経済的効果に実質的な違いがあるわけではないことを踏まえれば、仮想通貨で購入される場合全般を規制対象とすることが適当であるとしていました。また、このことは、トークン表示権利の購入に限らず、集団投資スキーム持分の購入についても、同様に妥当するとされていました。改正後の金商法第2条の2は、収益分配を受ける権利を有する者が出資した暗号資産を金銭とみなすことで研究会報告書で指摘された問題点を解決しています。

⑸ 暗号資産を用いたデリバティブ取引や資金調達取引を業として行う場合における金融商品取引業の登録、業務の内容及び方法の変更に係る事前の届出等に関する規定の整備(第29条の2、第29条の4、第31条関係)

金融商品取引業の登録を受けようとする者は、金商法第29条の2第1項に規定する一定の事項を記載した登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならないとされていますが、改正後の金商法第29条の2では、暗号資産を用いたデリバティブ取引や資金調達取引を業として行う場合にはその旨を登録申請書に記載しなければならないとされています(同条第1項第8号及び第9号。なお第8号については取引の対象となる権利の詳細は内閣府令で規定予定)。また、金商法第31条第3項では、金融商品取引業者は、業務方法書に記載した業務の内容又は方法について変更があつたときは、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならないとされていますが(事後届出)、改正後の同項では、金融商品取引業者は、当該書類に記載した業務の内容又は方法のうち、暗号資産を用いたデリバティブ取引や資金調達取引に係るもの(内閣府令で定めるものに限る。)について変更をしようとするときには、あらかじめ、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならないとされ、事前届出が必要とされています。

2.暗号資産の取引及び暗号資産を用いたデリバティブ取引等に関する不公正な行為の禁止(第185条の22~第185条の24関係)

研究会報告書では、仮想通貨の取引に関して実際に不公正な行為を行う者は、仮想通貨交換業者以外の者である場合も多いと想定されることから、実効性確保の観点からは、有価証券の取引に係る不公正取引規制と同様に、行為主体を限定することなく、不公正な行為を罰則付きで禁止することも有効であると指摘されていました。それを踏まえ、改正後の金商法では、第6章の3として「暗号資産の取引等に関する規制」と題する章を設け、そこで、暗号資産の取引及び暗号資産を用いたデリバティブ取引等との関係で、不正行為の禁止(同法第185条の22)、風説の流布、偽計、暴行又は脅迫の禁止(同法第185条の23)及び相場操縦行為等の禁止(同法第185条の24)に関する条文が新設されることになっています。

3.顧客に関する情報をその同意を得て第三者に提供する業務等に係る規定の整備(第35条第1項第16号関係)

第一種金融商品取引業者及び投資運用業者が金融商品取引業のほかに行える業務は、金商法上、金融商品取引業に付随する業務(「付随業務」)などに限定されていますが、改正後の金商法では、当該金融商品取引業者の付随業務に、顧客に関する情報をその同意を得て第三者に提供することその他保有する情報を第三者に提供することであって、本業の高度化又は利用者の利便の向上に資するものを追加することとされています。現状、金融機関が保有する情報・データは、基本的に金融機関自身の業務のみに活用されていますが、金融機関が地域企業の経営改善に貢献したり、利用者のニーズに応えたりできるよう、その業務に、顧客に関する情報を同意を得て第三者に提供する業務等を追加したものです。

4.電磁的記録に係る犯則調査手続等の整備(第210条~第226条関係)

令和元年改正法では、金商法において、一定の電磁的記録に関する差押えその他の電磁的記録に係る証拠収集手続等を整備することとされています。刑事訴訟法等と同様に、金融商品取引法の違反事案の調査においても、電子的に保管されたデータの差押え等を可能とするものです。

金販法

金融商品の販売の定義への暗号資産を取得させる行為の追加(第2条関係)

金販法には、金融商品販売業者等が金融商品の販売等を業として行おうとするときの私法上の説明義務などが定められていますが、改正後の金販法では、「金融商品の販売」に暗号資産を取得させる行為を追加することで、暗号資産交換業者は、暗号資産の販売に関して、金販法に基づく説明義務を負うことになります。また、令和元年改正法の施行後は、暗号資産を用いたデリバティブ取引が金商法で規定するデリバティブ取引として法律上整理されることから、金融商品取引業者がかかる取引を業として行おうとするときも、金販法に基づく説明義務を負うことになります。

農業協同組合法、水産業協同組合法、中小企業等協同組合法、信用金庫法、長期信用銀行法、労働金庫法、銀行法、保険業法及び農林中央金庫法

1.顧客に関する情報をその同意を得て第三者に提供する業務等に係る規定の整備(銀行法第10条、保険業法第98条関係)

銀行、保険会社等の付随業務に、顧客に関する情報をその同意を得て第三者に提供する業務その他保有する情報を第三者に提供する業務であって、本業の高度化又は利用者の利便の向上に資するものを追加するものとされています。第一種金融商品取引業者及び投資運用業者にかかる金商法の改正(金商法の上記3.参照)と同趣旨の改正です。

2.保険会社による保険業に関連する IT 企業等の子会社化に係る規定の整備(保険業法第106条関係)

保険会社の子会社については業務範囲規制がありますが、現状、保険会社の子会社は、フィンテック・ インシュアテックに関する業務を幅広く営むことはできないこととされています。しかし、保険会社の子会社が、フィンテック・インシュアテックに関する業務を幅広く営むことを通じ、保険分野におけるイノベーションが進展していくことが期待されると指摘されていました(規制の事前評価書(金融庁企画市場局総務課信用制度参事官室・市場課))。そこで、令和元年改正法の施行後は、保険会社は、認可を受けて、情報通信技術その他の技術を活用した保険業の高度化若しくは利用者の利便の向上に資する業務又はこれに資すると見込まれる業務を営む会社の議決権について、基準議決権数を超える議決権を取得し、又は保有することができることとされました。

金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律(一括清算法)

店頭デリバティブ取引における証拠金の清算に関する規定の整備(第4条関係)

令和元年改正法は、一括清算法の一部を改正することとし、店頭デリバティブ取引等の特定金融取引を行う金融機関等について更生手続開始の決定がされた場合には、当該特定金融取引に係る担保権の目的である財産は、更生手続開始の申立てがあった時又は譲渡した時において、更生手続開始の決定がされた者の相手方又は第三者に帰属することとし、当該担保権の目的である財産の額を一括清算後の債権額から控除することとされました。情報通信技術の進展を背景とした金融機関間での国際的な店頭デリバティブ取引の増加を踏まえ、国際慣行である担保権の設定による証拠金授受について、円滑な清算を可能とすることを目的としています。

 

各改正内容のうち、ファンド法務に直接的に影響があるのは、金商法の「1.暗号資産を用いた・・・資金調達取引に関する規制の整備」の(3)の電子記録移転権利に関する規律の新設と(4)の収益分配を受ける権利を有する者が出資した暗号資産等を金銭とみなす規定の新設ですので、MEMOでは次回以降でこの部分を中心に、ICOやその周辺概念について深掘りしていくことにしましょう。ではでは。

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