MEMORANDUM

ファンド法務NEWS第5回―ソーシャルレンディングにおける「匿名化・複数化」問題―⑤「貸付型ファンドに関するQ&A」の概要と留意点は何か?

こんにちは。弁護士の後藤慎吾です。

今回は、ソーシャルレンディングにおける「匿名化・複数化」問題の最終回「⑤「貸付型ファンドに関するQ&A」の概要と留意点は何か?」です。第二種金融商品取引業協会は、令和元年5月23日、日本貸金業協会と連名で、貸付型ファンドに関するQ&Aを公表しました。そこで、まず第二種金融商品取引業協会の説明から本MEMOを始めることにしましょう。

第二種金融商品取引業協会とは

一般社団法人第二種金融商品取引業協会(以下「二種業協会」といいます。)は、「正会員及び電子募集会員の行う第二種金融商品取引業等を公正かつ円滑にし、並びに第二種金融商品取引業等の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的」(定款第7条)として設立された、金商法第78条第1項に基づいて認定金融商品取引業協会としての認定を受けた自主規制機関です。

なお、金融商品取引業に関する自主規制機関である金融商品取引業協会には認可金融商品取引業協会(金商法第4章第1節)と認定金融商品取引業協会(同章第2節)があり、現在は、認可金融商品取引業協会として日本証券業協会が、認定金融商品取引業協会として、一般社団法人投資信託協会一般社団法人日本投資顧問業協会一般社団法人金融先物取引業協会及び第二種業協会があります。

二種業協会がカバーするのは、金商法第2条第2項各号に規定されたみなし有価証券に関する業務であり、みなし有価証券には、ファンド持分(同項第5号・第6号)のほか、信託受益権(同項第1号)も含まれるため、二種業協会の正会員には、ファンド持分販売業者のほか、不動産会社などの信託受益権販売業者もいます。ちなみに、第二種金融商品取引業には、上記の業務の他、有価証券等以外の市場デリバティブ取引投資信託などの直接販売業などがありますが、これらに関する自主規制機関は金融先物取引業協会及び投資信託協会になります。 金融商品取引業者が第二種金融商品取引業を行う場合に、二種業協会への加入義務があるわけではありません。平成31年4月30日時点で第二種金融商品取引業者は1198者いますが、入会金100万円・年会費50万円がネックになっているのか、令和元年5月29日時点で二種業協会の正会員は519者に留まっています。

二種業協会は、「正会員及び電子募集会員の行う第二種金融商品取引業等の取引の勧誘の適正化に必要な業務のため必要な規則の制定を行うこと」を業務の一つとしており(定款第8条第1項第5号)、自主規制規則を定めることができます(同第9条第2項)。また、正会員がそれに違反した場合には、二種業協会は当該正会員を処分することができるとされています(同第23条第1項第3号)。

二種業協会は、自主規制規則として様々なものを定めていますが、今回のテーマである「貸付型ファンドに関するQ&A」に関係するものとして「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」を定めています。

事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則とは

事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則(以下「事業型ファンド規則」といいます。)は、第二種金融商品取引業者(以下「二種業者」といいます。)による事業型ファンドの違法な販売による投資者被害、行政処分事案が続いたことから、事業型ファンドへの投資が萎縮することを防ぎ、資金需要者へリスクマネーを円滑に供給するためには、事業型ファンドへの信頼性・安心感を確保し、投資者被害を適切に防止するための措置を講じる必要があるという背景・目的のもと、平成29年6月19日に制定、平成30年1月1日に施行されました。また、事業型ファンド規則の内容を解説するものとして、二種業協会から「「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」に関するQ&A」(以下「事業型ファンド規則Q&A」といいます。)が平成29年9月19日に公表されています。

事業型ファンド規則における「事業型ファンド」は、金商法「第2条第2項第5号又は第6号に掲げる権利のうち、出資対象事業が主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資(金融商品取引法施行令第2条の9第1項第1号及び第2号に規定する出資を除く。)以外のものをいう。 」と定義されており(同規則第2条第1項)、ソーシャルレンディングにおいて発行される貸付業務を出資対象事業とする匿名組合出資権利は「事業型ファンド」に該当することになります。なお、「主として」は運用財産の50%超を指すと説明されています(事業型ファンド規則Q&AのQ2)。

金商法「第2条第2項第5号又は第6号に掲げる権利のうち、出資対象事業が主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資」である場合には、運用行為についても投資運用業として金商法の規制(投資運用業者の善管注意義務や投資家への運用報告書の交付義務など)が及ぶことになりますが、「出資対象事業が主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資」以外のもの(事業型ファンド)である場合には、運用行為に、投資運用業に関する金商法の規制は及ばないことになります。したがって、事業型ファンドは他の類型のファンド(有価証券・デリバティブ取引投資ファンド)に比べて投資家保護のための規律が緩いといえ、それが、上述した二種業者による事業型ファンドの違法な販売による投資者被害や行政処分事案が続出した原因と考えられました。事業型ファンド規則Q&Aでは事業型ファンド規則の制定の必要性について以下のように説明されています(同1頁)。

事業型ファンドでは、金商法上、事業者が行う出資対象事業に対する規制や監督、開示義務や出資者への運用報告義務が課されておらず、ファンドの透明性・流動性が低いことから、出資者と事業者との間にファンドの状況について、情報格差が生じることとなります。
過去の投資者被害、行政処分事案では、事業者や事業者と関連する者が出資者との情報格差を利用して、出資金の目的外利用や、費消・流用している事案などが存在し、こうした事態を防ぐためには、事業者と出資者を結び付ける役割を担う正会員において、事業者と出資者との情報格差を埋める取組みが必要であると考えられます。
また、出資者は、事業型ファンドの商品性はもちろんのこと、登録業者である正会員を信頼し、投資を決定している側面も否定できません。正会員が取扱ったファンドが破綻し、正会員が出資者から販売責任を問われる事態を回避・防止し、出資者からの信頼を失わないためにも、正会員において、事業者と出資者との情報格差を埋める取組みが必要と考えられます。
そのため、本規則では、投資者に適切な情報を提供し、事業者による出資対象事業での不祥事を防止する観点から、正会員が事業型ファンドの私募の取扱い等(本規則第2条第5項に定める「私募の取扱い等」をいう。)を行うにあたり、次の事項を定め、対応を求めています。
① 正会員による事業型ファンドの販売・勧誘の審査の適正化
② 正会員による勧誘の適正化
③ 正会員による事業型ファンド発行後のモニタリングの拡充
④ 事業者によるファンド報告書の作成、交付

このように、事業型ファンド規則で、大要、①正会員による事業型ファンドの販売・勧誘の審査の適正化、②正会員による勧誘の適正化、③正会員による事業型ファンド発行後のモニタリングの拡充及び④事業者によるファンド報告書の作成・交付が求められることになりました。その概要を知るにはQ&A3頁がわかりやすいと思いますので以下に引用しておきます。

出典:一般社団法人第二種金融商品取引業協会「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」に関するQ&A(平成29年9月19日)3頁

ソーシャルレンディング業者(ファンドの自己募集業者又は私募の取扱業者)が二種業協会に加入している場合には、当該業者は事業型ファンド規則に従って業務を行う必要があります。それでは、ソーシャルレンディング業者が二種業協会に加入していない場合は、事業型ファンド規則を無視して業務を行いうるものでしょうか?答えはNoです。その理由は、金融商品取引業登録の拒否事由を定めた金商法第29条の4第1項第4号ニにあります。

(登録の拒否)

第二十九条の四 内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはこれに添付すべき書類若しくは電磁的記録のうちに虚偽の記載若しくは記録があり、若しくは重要な事実の記載若しくは記録が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
・・・
四 第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業又は投資運用業を行おうとする場合(個人である場合を除く。)にあつては、次のいずれかに該当する者
・・・
ニ 協会(認可金融商品取引業協会又は第七十八条第二項に規定する認定金融商品取引業協会をいい、登録申請者が行おうとする業務を行う者を主要な協会員又は会員とするものに限る。以下この号及び第三十三条の五第一項第四号において同じ。)に加入しない者であつて、協会の定款その他の規則(有価証券の売買その他の取引若しくは第三十三条第三項に規定するデリバティブ取引等を公正かつ円滑にすること又は投資者の保護に関するものに限る。)に準ずる内容の社内規則(当該者又はその役員若しくは使用人が遵守すべき規則をいう。)を作成していないもの又は当該社内規則を遵守するための体制を整備していないもの

二種業者が上記の登録拒否事由に該当する場合には、登録の取消しや業務停止命令の対象となります(金商法第52条第1項第2号)。したがって、二種業協会の会員ではない二種業者がソーシャルレンディング事業において私募の取扱い等を行う場合には、事業型ファンド規則に準ずる社内規則を作成し、当該社内規則を遵守するための体制整備を行う必要があるわけです。

(ようやく)「貸付型ファンドに関するQ&A」の概要と留意点

前置きはここまでとして、本題の貸付型ファンドに関するQ&A(以下「本Q&A」といいます。)に話題を移しましょう。これまで事業型ファンド規則について説明してきたのは、本Q&Aは、第1部が貸金業法関係、第2部は事業型ファンド規則関係というように2部構成になっており、後半部分は、貸付型ファンドとの関係で事業型ファンド規則の解釈を具体的に明らかにするものであるからです。なお、本Q&Aは、第1部で貸金業法の解釈問題について扱っていることから、二種業協会と日本貸金業協会の連名で公表されています。

第1部 – 貸金業法関係

本Q&Aの第1部では、金融庁のノーアクションレター制度の回答(金融庁監督局総務課金融会社室長「金融庁における法令適用事前確認手続(回答書)」(平成31年3月18日)、以下「本回答」といいます。)として公表された、資金提供者が貸金業の登録を行わずにソーシャルレンディングに参加できる非匿名化・複数化の運用の要件等について解説されています。

なお、本Q&Aが対象とする「貸付型ファンドは、事業者が投資者からの出資金を原資として、主として金銭の貸付け(金銭消費貸借)を行うことを出資対象事業とするファンドです 。」と説明されており(Q1)、必ずしも「インターネットを利用して募集が行われるファンド」(Q1)に限定されるものではないことに留意が必要です。

本Q&Aの第1部で特に留意するべき点として、本回答で示された以下の要件(貸付約款等、社内規則及び匿名組合約款等の規定)についてその具体的な内容が示されたことが挙げられます(本Q&AのQ4~Q8)。

・・・

(2)ファンド事業者(貸付実行者)
貸付約款等において、ファンド事業者(貸付実行者)自らが、貸付金額、貸付金利、資金使途等の貸付条件を設定のうえ借り手に提示し、借り手と投資者 とが貸付けに関する接触をしない旨や当該接触をさせないことを担保するための措置が明記されていること。
ファンド事業者(貸付実行者)は、貸金業法第24条の6の12第2項に規定する社内規則に、借り手と投資者とが貸付けに関する接触をさせないことを担保す るための措置を規定していること。
(3)ファンド販売業者
匿名組合約款等において、投資者は、貸付け業務を執行することができず、貸付け行為に関し、権利及び義務を有していないこと、また、投資者と借り手 とが貸付けに関する接触をしない旨や当該接触をさせないことを担保するための措置が明記されていること。

・・・

本MEMOでそのすべてについて説明するわけにもいかないので、ここでは本回答の(2)①の貸付約款等の記載内容について解説した本Q&AのQ4とQ5を引用しておきます。

Q4 借り手との貸付(取引)約款等に明記すべき内容
Q ファンド事業者(貸付実行者)が方策を講じることとされている借り手との「貸付(取引)約款等に明記する内容」(Q2の3(2)①)とは、具体的にはど
のような内容か。

「貸付(取引)約款等に明記する内容」とは、次の内容が該当します。
1. 権利義務関係の確認(貸付条件の設定、金銭の交付、貸付債権の保有・管理等金銭の貸付けに関する行為を実行する者はファンド事業者(貸付実行
者)であり、投資者は貸付けに関し何らの権利義務も有さないこと等)
2. 契約の申込みと成立
3. 貸付条件(貸付金額、貸付金利、資金使途、弁済の時期・方法、融資実行手数料等)
4. 信用情報の取扱いに関する同意
5. 借り手(実質的な借り手を含む。)からファンド事業者への通報(投資者から貸付けに関する直接の接触があった場合)
6. 借り手の禁止事項(借り手と投資者の間で貸付けに関する直接の接触を実施しないこと等)
7. 上記6の禁止事項に反した場合のペナルティに関する事項(場合によっては投資者が貸金業法違反になることを含む。)

Q5 借り手が禁止事項に反した場合のペナルティに関する事項
Q Q4の7「借り手が禁止事項に反した場合のペナルティに関する事項(場合によっては投資者が貸金業法違反になることを含む。)」とは、具体的にはど
のような内容か。

借り手が禁止事項に反した場合のペナルティに関する事項としては、例えば、借り手が投資者に対して、貸付けに関する直接の接触を行った場合の借り手に対する貸付金の期限の利益の喪失、契約の変更(貸付けの金利の引上げ等)などが考えられます。

ソーシャルレンディングにおいて非匿名化・複数化の運用を採用するためには、ファンド事業者が資金の借り手との間で締結する貸付契約に上記のQ4及びQ5で記載された事項を規定する必要があります。特に、太字にした部分は、これまでソーシャルレンディングで用いられてきた貸付契約に規定されてこなかった条項になりますので、新規に当該運用を採用する場合には漏れなく規定を入れ込む必要があります。また、ソーシャルレンディング事業者において、借り手が投資者に接触した場合のその後の対応フローについて社内規則などで位置付け、社内周知を図っておく必要があるものと考えられます。

ところで、本回答の(2)①及び本Q&AのQ4・Q5によれば、借り手が投資者に対して貸付けに関して直接の接触をすることは禁止され、実際に借り手が投資者に貸付けに関して接触した場合には、借り手は、期限の利益の喪失(借り手が期限の利益を喪失した場合には、貸金債務について返済スケジュールが定められたときであってもそれを一括弁済しなければならなくなります。)や金利の引上げなどのペナルティを被ることになります。ただ、この要件については、本来、ソーシャルレンディングに匿名化・複数化の運用や今回の非匿名化・複数化の運用が導入されたそもそもの理由が、貸金業法の目的である資金需要者(借り手)の保護にあったはずなのに、結果として借り手が不利益を被ることになる要件が盛り込まれているのは、よくよく考えてみると背理であるように感じます。

また、本Q&AのQ6で本回答(2)②の社内規則で規定するべき事項を、本Q&AのQ7及びQ8で本回答(3)①の匿名組合約款等で規定するべき事項をそれぞれ説明していますので適宜ご参照ください。

第2部 – 事業型ファンド規則関係

貸付型ファンドが事業型ファンドに該当することを前提として、貸付型ファンドへの事業型ファンド規則の適用関係について解説したのが本Q&Aの第2部です。本Q&Aは、第1部が9頁の分量なのに対して、第2部は24頁もあり、むしろ第2部の方が本Q&Aの主役といえるのかもしれません。

本Q&A第2部の位置付けについて、二種業協会「「貸付型ファンドに関するQ&A」(案)に関するパブリックコメントの概要及び本協会の考え方 」(令和元年5月23日 、以下「本パブコメ回答」といいます。)の2では以下の通り回答されています。

コメント
事業型ファンド規則及びその「別表」に明確に規定されていない事項までが本Q&Aに記載されているが、本Q&Aに拘束力はあるのか。
つまり本Q&Aの記載とおりにない場合は、何らかの違反として問われるのか。

回答
本Q&A第Ⅱ部は、事業型ファンド規則に基づき、貸付型ファンドにおける情報提供等の実務対応の留意点・解釈を示したもので、当該内容を踏まえた対応を同規則として求めるものです。当該対応が行われていない場合、事業型ファンド規則に違反し得るものになります。

また、本パブコメ回答の1では「本協会の会員ではない二種業者が、貸付型ファンドの私募の取扱い等を行う場合には、本Q&Aで示した留意点・解釈を踏まえて事業
型ファンド規則に準ずる社内規則の作成、当該社内規則を遵守するための体制整備が求められます。 」と回答されており、本Q&Aは、二種業協会に加入していない二種業者についても金商法第29条の4第1項第4号ニを通じて拘束力のあるものとなっています。

ここで改めて考えてみると、事業型ファンド規則は平成30年1月1日にすでに施行されており、ソーシャルレンディング業者はこの規則に従って業務を行ってきたはずです。また、事業型ファンド規則についても二種業協会はQ&A(「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」に関するQ&A(平成29年9月19日))を公表しており、そこでは事業型ファンド規則の内容の具体的な説明もなされています。それでは、なぜわざわざ本Q&Aの第2部が定められたのでしょうか?その理由について、二種業協会は「本Q&Aの第Ⅱ部は、事業型ファンドのうち、貸付型ファンドについて、最近の貸付型ファンドの不祥事例等を踏まえて、投資者が適切な投資判断を行うために情報提供すべき事項等を明確にするなど、特に留意すべき事項等を示したものである」と説明しています(本パブコメ回答25)。本Q&Aの第2部で明らかにされた事項は多岐に及びますが、本MEMOでは、その中で最も重要と考えられる勧誘時に投資者に対して提供・説明すべき情報について記載したQ13について説明することとします。まず、事業型ファンド規則第6条と別表4を見てみましょう。

(適正な勧誘)
第6条 正会員は、事業型ファンドの私募の取扱い等に当たっては、顧客(対象除外顧客を除く。以下本条において同じ。)に対して、別表4に定める情報その他の重要な情報を提供し、顧客に分かりやすく説明を行わなければならない。

(別表4)第6条に規定する情報提供

1.正会員と事業者及び運営者の利害関係の状況
例えば、正会員が事業者若しくは運営者、又は事業者若しくは運営者が正会員の議決権の50%超を保有している場合、役員(当該会社の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与える者に限る。)が兼務又は派遣している場合などには、その旨
2.事業者及び運営者の財務状況又は財務情報(一の事業型ファンドの出資対象事業のみを行う事業者の財務状況又は財務情報を除く。)
3.資金使途及び事業計画の概要
4.分別管理の方法(金商業等府令第92条の2第1項第1号に掲げる事項をいう。)
5.別表3の審査により判明した具体的リスクや注意事項等
例えば、出資対象事業がレバレッジを用いる場合の当該リスク、転売や中途解約を禁止している場合の当該事項など。
6.事業者によるファンド報告書の交付方法又は正会員が事業者の委託を受けてファンド報告書の交付を行うときはその旨及び方法

正会員は、二種業者として、金商法上、一般投資家に対して契約締結前交付書面の交付義務を負い、実質的説明義務を負っていますが、事業型ファンド規則第6条と別表4はその内容を敷衍するものといえます。ここで留意しなければならないのは、正会員は、顧客に対して、別表4に定める情報だけを提供すればよいわけではなく、「その他の重要な情報」を提供する必要がある点です。事業型ファンド規則のQ&Aでは以下のような説明がなされています。

Q30 「その他の重要な情報」の考え方
Q 本規則第6条は、正会員が、事業型ファンドの私募の取扱い等を行うにあたり、顧客に対して、別表4に定める情報その他の重要な情報を提供し、分かり
やすく説明を行わなければならないと定めているが、「その他の重要な情報」とはどういった情報を指すのか。

1.正会員は、出資者(顧客)が事業者の出資対象事業への投資判断を行うために必要な情報を提供し、説明する必要があります。
出資者が、事業者の出資対象事業の具体的リスクとリターンを認識し、投資するか否かを判断するためには、事業者の出資対象事業のリスクが顕在化する可能
性や顕在化したときの影響の大小、当該リスクを回避するために事業者が実施する取組みなどを認識し、評価する必要があります。
2.正会員は、出資者が投資判断を行なうために必要と考えられる重要な情報として、契約締結前交付書面や別表4に定める情報だけでは不十分と判断する場合には、出資者に対して、当該不足分を補う情報を本規則第6条「その他の重要な情報」として提供し、出資者に分かりやすく説明する必要があります。

出資者(顧客)が事業者の出資対象事業への投資判断を行うために必要な情報」といわれてもどこまでの事実がこれに該当するのかの判断は難しいですよね。そこで、本Q&AのQ13では、以下のように、事業型ファンドの一類型である貸付型ファンドについてこの点を明確にしました。

2.特に、貸付型ファンドの勧誘に関しては、上記1の各情報(注:別表4の情報)に加え、「その他の重要な情報(投資者が事業者の貸付事業への投資判断を行うために必要な情報)」として、正会員は、顧客(対象除外顧客を除く。以下同じ。)に対して、次の情報を提供し、説明する必要があります。
貸付先(借り手)の属性(業種・事業内容など貸付先の情報、貸付先と正会員及び事業者との利害関係の状況など)
貸付条件(貸付額や金利、貸付予定日、貸付期間など)
貸付先の資金使途
回収可能性に影響を与える情報(借り手の財務状況又は財務情報、担保情報(担保の有無、担保がある場合には、その種類や評価額、評価方法)、借り手が資本欠損又は債務超過、返済猶予(リスケ)を受けている事実が判明した場合にはその旨など)
審査態勢(審査体制、審査手続きなど)
貸付債権の管理、回収方針・態勢(貸付契約において期限の利益が喪失した場合の具体的な回収プロセスなど)
3.貸付型ファンドの募集時に具体的な貸付先が決定していない場合や、ファンドの運用期間中反復継続して不特定の者に貸付行為を行う場合には、上記2.
①から④までの情報に代えて、次の情報を提供し、説明する必要があります。
貸付方針
貸付・審査基準(有担保を条件とする場合の担保の受入基準、評価方法等を含む。)
なお、募集後に借り手が決定した場合における情報に関しては、ファンド報告書の「出資対象事業の概況(運用状況の経過及び出資金の使途を含む。)」などにより、投資者に適切に提供する必要があります。

本Q&Aの14頁に以下のイメージ図が記載されていますので引用しておきます。

出典:一般社団法人第二種金融商品取引業協会「貸付型ファンドに関するQ&A」(令和元年5月23日)14頁

このように、本Q&Aでは、正会員が貸付型ファンドを勧誘するにあたって投資者に対して提供するべき「その他の重要な情報」として、①貸付先(借り手)に関する情報や②借り手との間の貸付契約の条件や担保の状況といった情報が該当することが明確になりました。例えば、別表4では、事業者(貸金業者)の財務状況又は財務情報が情報提供の対象とされていましたが、本Q&Aでは、借り手の財務状況又は財務情報についても情報提供の対象とすることが明確にされ、また、資金使途についても事業者のもののみならず、貸付先のものについても投資者に説明する必要があるとされています。投資者(顧客)からしてみれば、自らの出資のリターンは①事業者(貸金業者)の信用リスクのみならず、②借り手の信用リスクや事業上のリスクなどに晒されることになりますので、本来であれば、それら全体を吟味しないと実効的な投資判断は下せないはずです。本Q&Aは、借り手の非匿名化の解禁にあわせ、②の借り手の信用リスクなどの検討材料も開示の対象とすることを明確にした点で、投資者保護を推し進めたといえるでしょう。

本Q&Aについては制定日である令和元年5月23日から施行されており、「速やかに本Q&Aに沿った対応措置、実施計画等の検討を行い、当該実施計画に基づく当該対応措置を実施することが求められてい」るとしています(本Q&AのQ26)。

実務の動向と根本的な疑問

本MEMOの公開時点(令和元年6月5日)で複数のソーシャルレンディング業者が非匿名化の運用の方針を公表しています。以下はその例です。

業者名 プレスリリース
2019年4月17日 日本クラウド証券株式会社 融資先の情報開示等に関する対応につきまして
同年5月16日 SBIソーシャルレンディング株式会社 ソーシャルレンディングにおける借手開示対応の開始について
同月17日 クラウドクレジット株式会社 当社の貸付先匿名化解除に関わる情報公開の方針につきまして
同月29日 ロードスターキャピタル株式会社 『OwnersBook』の貸付型案件における情報開示の方針について

正会員は、貸付先(借り手)の同意が得られないなどの理由により投資者に貸付先の商号・名称、所在地などの情報を提供しないことも可能ですが(その場合には当該情報を提供しない理由を説明する必要があります。(本Q&AのQ14))、ソーシャルレンディング業界において、金融当局からの指導で導入された匿名化・複数化の運用に対する評価は芳しくなかったことから、このような実務動向は当然の流れといえるでしょう。今回のソーシャルレンディングにおける「匿名化・複数化」の問題に関する顛末は、金融取引において何よりも求められるのは顧客への情報開示、つまり透明化である、ということをいみじくも裏付ける結果となったといえます。

ところで、ソーシャルレンディングにおける「匿名化・複数化」の問題は、貸金業法の適用範囲の広範さという貸金業法の本質的な問題をあぶり出したともいえます。つまり、貸金業法で規制の対象となる「貸金業」が「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(・・・)で業として行うもの」と包括的に定義されており(同法第2条第1項)、資金の貸し手や借り手の属性(法人・個人の違いや財産状況など)といった個別の状況が考慮されていないことから、実務で個別の案件を扱うと、特に、借り手が法人の場合には、果たしてその者を貸金業法で保護するべき者というべきか、について立法でもう少し吟味してもよいのではないか、と感じることがあります。そこは、「業として」の要件を使って規制対象となる貸付行為を絞り込むことができればよいのですが、これまでの判例(本連載第2回「②ソーシャルレンディングの匿名化・複数化の運用とは何か?」参照)に照らすとなかなか「業として」行っていないと言い切ることが難しく、悩ましさが残るわけです。ソーシャルレンディングの匿名化・複数化の運用においても、資金の借り手が法人である場合にのみ非匿名化・複数化の運用を認め、資金の借り手が個人である場合にはなお匿名化・複数化が必須であるとしていることからもわかるように、貸金業法でより資金需要者保護の要請が強いのは個人であるといえます。現行貸金業法を前提とした場合には、本回答において法人が借り手の場合にもなお貸金業法の資金需要者保護の要請に配慮しているのはあるべき対応のようには思いますが、立法論としては、例えば、金商法において特定投資家制度があるように、貸金業法においても資金需要者保護が不要な法人の類型化について検討してもよいのではないかと思っています。

5回にわたってご説明してきたソーシャルレンディングにおける「匿名化・複数化」の問題についてはひとまずこれまでとして、先週、新たにファンド法務に関係する動きがありました。つまり、令和元年5月31日に、仮想通貨(暗号資産)やICOなどに関係して資金決済法等の改正法情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律が成立しました。そこで、次回の本MEMOでもファンド法務NEWSとしてこの改正法を取り上げようと思います(ファンド法務Q&A第2回がなかなかアップできない・・・)。

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