MEMORANDUM

ファンド法務NEWS第1回―ソーシャルレンディングにおける「匿名化・複数化」問題―①そもそもソーシャルレンディングとは何か?

こんにちは。弁護士の後藤慎吾です。

今回のMEMOは、ファンド法務Q&Aの連載ではなく、ファンド法務分野でホットな話題になっているトピックを取り上げるファンド法務NEWSです。

今回から5回に分けて、ソーシャルレンディングにおける「匿名化・複数化」の問題について取り上げようと思います。

初回のMEMO「ウェブサイト「FundBizLegal」の公開にあたって」でご紹介しましたが、本年3月18日に、金融庁から、ソーシャルレンディングにおける匿名化・複数化という運用について異なった扱いを許容するノーアクションレター制度の回答がありました(金融庁における法令適用事前確認手続(回答書)(平成31年3月18日))。それを受け、(金融庁から金商法第78条第1項の規定に基づいて認定金融商品取引業協会としての認定を受けた自主規制機関である)一般社団法人第二種金融商品取引業協会が、4月12日に、パブリックコメントの募集手続を終え、近く「貸付型ファンドに関するQ&A」を制定する予定です。私自身、これまで、金融商品取引業者のクラウドファンディング事業に携わってきたこともあり、個人的に関心をもってきた分野です。

そこで、これからMEMOでも、①そもそもソーシャルレンディングとは何か?、②ソーシャルレンディングの匿名化・複数化の運用とは何か?、③匿名化・複数化がもたらした問題点はどのようなものか?④金融庁のノーアクションレター制度の回答の内容はどのようなものか?、⑤第二種金融商品取引業協会の「貸付型ファンドに関するQ&A」の概要と留意点は何か?の5点についてご説明することとします。本MEMOでは「①そもそもソーシャルレンディングとは何か?」を取り上げます。

そもそもソーシャルレンディングとは何か?

ソーシャルレンディング」(Social Lending)とは、融資(貸付)型クラウドファンディングのことであり、新規・成長企業等(資金の借り手)と資金提供者(投資者)をインターネット経由で結び付け、多数の資金提供者から少額ずつ集めた資金を企業に融資する仕組みをいいます。

ファンド運営業者が匿名組合契約に基づく権利(以下「匿名組合出資権利」といいます。)を自己募集する(自らが新規に発行する匿名組合出資権利の取得の申込みの勧誘を行う)ことを前提に以下にイメージ図を示しました。なお、ソーシャルレンディングの形態としては、ファンド運営業者が匿名組合出資権利を自己募集する場合の他に、他の発行体が貸付事業を出資対象事業とする匿名組合出資権利を発行する場合に、第二種金融商品取引業者が募集・私募の取扱い(他の発行体が新規に発行する有価証券について当該発行体の委託を受けて当該有価証券の取得勧誘を行う行為)を行う場合もあり、この場合にはいわゆる預託金スキームを利用することが可能になるという点でメリットがあるのですが、議論が錯綜するので今回は説明を割愛します。

では、このイメージ図に沿って(1)ソーシャルレンディングの流れと(2)金融レギュレーションとの関係での各行為の位置づけを簡単に見ていきましょう。金融レギュレーション自体に関する詳しい説明は、ファンド法務Q&Aの連載に譲りますので、ここでは大枠をつかんでいただければと思います。

①投資勧誘

ファンド運営業者は、その管理するウェブサイトを通じて、不特定多数の人に対して、(i)個々の融資案件の告知及び(ii)ファンド運営業者が新規に発行する匿名組合出資権利の取得勧誘(取得の申込みの勧誘)を行います。そこでは、資金の借り手への融資スキーム、資金の借り手の事業概要、予想利回り、運用期間、募集総額、募集期間、担保・保証の有無、最低出資金額などが表示されます。

ファンド運営業者のかかる行為は、匿名組合出資権利(金商法第2条第2項第5号に規定された権利であり、同項により有価証券とみなされます。)の募集又は私募に該当し、これを業として行う場合には、金商法第2条第8項に規定する「金融商品取引業」に該当します。金商法第2条第8項は以下のように規定しています。

8 この法律において「金融商品取引業」とは、次に掲げる行為(その内容等を勘案し、投資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるもの及び銀行、優先出資法第二条第一項に規定する協同組織金融機関(以下「協同組織金融機関」という。)その他政令で定める金融機関が行う第十二号、第十四号、第十五号又は第二十八条第八項各号に掲げるものを除く。)のいずれかを業として行うことをいう。
・・・
七 有価証券(次に掲げるものに限る。)の募集又は私募
・・・
ヘ 第二項の規定により有価証券とみなされる同項第五号又は第六号に掲げる権利
・・・

また、金商法第29条は以下の通り規定しており、ファンド運営業者は、匿名組合出資権利の取得勧誘を行う前に、金融商品取引業第二種金融商品取引業(金商法第28条第2項第1号))の登録を受ける必要があります。なお、適格機関投資家等特例業務の特例によって適格機関投資家等特例業務の届出(同法第63条第2項)によって対応することとし、金融商品取引業の登録を受けることを回避できないかが一応問題になりますが、不特定多数の資金提供者から出資を募るというソーシャルレンディングの性質上、適格機関投資家等特例業務の投資家要件(金商法施行令17条の12第1項及び第2項)などの要件を充足することは現実的に困難であろうと思います。

(登録)

第二十九条 金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。

また、ファンド運営業者は、金商法が規定する行為規制等の規制に従ってその業務を行う必要があります。イメージ図の左側の下方に金商法と記載していますが、資金提供者との関係では、ファンド運営業者に金商法が適用されることを示しています。

そのほか、第二種金融商品取引業協会の正会員であるファンド運営業者は、当該協会の自主規制規則を遵守する必要があります。ソーシャルレンディングにおける匿名組合出資権利の出資対象事業は資金の借り手への貸付事業であり、「主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資」に該当しないことから、事業型ファンドに分類されます。したがって、ファンド運営業者は、当該協会の自主規制規則のうちで特に「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」に留意して事業を行う必要があります。

②申込み

資金提供者は、ファンド運営業者が管理するウェブサイトを通じて、出資を希望する金額を入力するなどして、ファンド運営業者に対して、上記①で投資勧誘のあった匿名組合出資権利の取得の申込みを行います。なお、資金提供者が当該申込みを行う前に、当該ウェブサイト上で、匿名組合契約や契約締結前交付書面(金商法第37条の3第1項及び第2項)が表示され、資金提供者はその内容を確認したうえで当該申込みを行うことが想定されています。また、ファンド運営業者は、犯罪収益移転防止法に基づいて、資金提供者との間で③の匿名組合契約を締結するに際して資金提供者について取引時確認を行う必要がありますが(同法第4条)、一般に、ソーシャルレンディングサービスの利用を新規に希望する資金提供者は、まずファンド運営業者が管理するウェブサイト上で投資家登録を行うこととし、その過程でファンド運営業者は資金提供者について取引時確認を行い、その完了がないと資金提供者は個別の案件への出資申込みができないようなシステムになっています。

③匿名組合契約の締結

ファンド運営業者が、資金提供者が行った上記②の匿名組合出資権利の取得(言い換えれば匿名組合契約の締結)の申込みに対して承諾をすることによって、両者の間に匿名組合契約が成立します。また、当該契約の成立後に契約締結時交付書面がファンド運営業者が管理するウェブサイトの資金提供者専用のマイページなどで交付されます(金商法第37条の4)。

なお、匿名組合契約は、ファンド契約の一類型であり、商法に規定のある契約です。商法第535条は匿名組合契約について以下のように定めています。

(匿名組合契約)

第五百三十五条 匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をしその営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。

イメージ図の資金提供者A~Cは商法第535条の「当事者の一方」に、ファンド運営業者は「相手方」に、資金の借り手への貸付事業が「営業」に、それぞれ該当します。また、ファンド運営業者は匿名組合契約上「営業者」、資金提供者は「匿名組合員」と呼ばれます。

日本法に基づいて組合型ファンドを組成する場合に選択するビークルとしては、民法組合匿名組合投資事業有限責任組合及び有限責任事業組合がありますが、民法組合、投資事業有限責任組合及び有限責任事業組合は組合員が3名以上であっても全組合員は1つの契約の当事者となるのに対して、匿名組合は営業者と匿名組合員との1対1の契約である(従って営業者が行う特定の営業のために複数の匿名組合員が出資する場合には匿名組合員の数だけ契約の束が生じる)点で特殊性があります(イメージ図の③参照)。

④出資

資金提供者は、匿名組合契約に基づいて、ファンド運営業者に対して、自らの出資額に相当する金銭を銀行振込みなどの方法によって払い込みます。多数の資金提供者の出資により蓄積されたファンド財産はファンド運営業者が貸付事業を行うための原資になります。

⑤金銭消費貸借契約の締結

ファンド運営業者は、新規・成長企業等の資金の借り手との間で、ファンド運営業者が資金の借り手に対して金銭を貸し付ける旨の契約を締結します。ここで締結される契約は消費貸借契約といいます。民法第587条は消費貸借契約について以下のように規定しています。

(消費貸借)

第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

ファンド運営業者と資金の借り手は、この契約において、借入元本額、利率、元利金の返済スケジュール、資金使途、履行遅滞時の処理(期限の利益喪失条項など)といった条件について合意することになります。また、ファンド運営業者が⑥の融資実行によって資金の借り手に対して有することになる貸付債権を保全するために、担保権の設定や借り手の関係者による連帯保証がなされることもあります。

ファンド運営業者は、貸金業法第11条第2項第2号(下記参照)に基づいて、資金の借り手に対して金銭消費貸借契約の締結に関する勧誘を行う前に、予め⑥で説明する貸金業登録を受けておく必要があります。

(無登録営業等の禁止)
第十一条 第三条第一項の登録を受けない者は、貸金業を営んではならない。
2 第三条第一項の登録を受けない者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 貸金業を営む旨の表示又は広告をすること。
二 貸金業を営む目的をもつて、貸付けの契約の締結について勧誘をすること。

また、ファンド運営業者は、犯罪収益移転防止法に基づいて、資金の借り手との間で⑤の金銭消費貸借契約を締結するに際して資金の借り手について取引時確認を行う必要があります(同法第4条)。

⑥融資実行

ファンド運営業者は、④の出資によって蓄積されたファンド財産である金銭を充当して、資金の借り手に対して、⑤の金銭消費貸借契約に基づいて融資を実行します。ファンド運営業者によるこの行為は貸金業法第2条第1項(下記参照)に規定する「金銭の貸付け」に該当します。また、ファンド運営業者は反復継続して金銭の貸付けを行うことから「業として」行うものといえ、「貸金業」を行うことになります。

(定義)
第二条 この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一 国又は地方公共団体が行うもの
二 貸付けを業として行うにつき他の法律に特別の規定のある者が行うもの
三 物品の売買、運送、保管又は売買の媒介を業とする者がその取引に付随して行うもの
四 事業者がその従業者に対して行うもの
五 前各号に掲げるもののほか、資金需要者等の利益を損なうおそれがないと認められる貸付けを行う者で政令で定めるものが行うもの

したがって、ファンド運営業者は、貸金業法第3条第1項に基づいて、内閣総理大臣又は都道府県知事の貸金業登録を受ける必要があります。貸金業法第3条第1項は以下のように規定しています。

(登録)

第三条 貸金業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては内閣総理大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。

また、ファンド運営業者は、貸金業法が規定する行為規制などの規律を遵守してその業務を行う必要があります。イメージ図の右側の下方に貸金業法と記載しているのは、ファンド運営業者による資金の借り手への貸付けとの関係で貸金業法上の規制があることを示しています。

⑦元利金の弁済

資金の借り手は、ファンド運営業者に対して、⑤の金銭消費貸借契約において合意した元利金の返済スケジュールに従って元利金を弁済していくことになります。

⑧出資金の償還・利益の分配

ファンド運営業者は、資金の借り手による⑦の元利金の弁済によって回収した金銭(これはファンド財産を構成します。)について、匿名組合契約において予め資金提供者と取り決めた管理報酬及び費用を控除したうえで、資金提供者に対して、出資金の償還・利益の分配を行います。他方で、例えば、資金の借り手に元利金の支払い原資がなく、破産手続が開始され最終的に免責決定が出されたような場合には、ファンド財産である資金の借り手に対する貸付債権は回収可能性がなくなりますが、それによって生じた損失は資金提供者が負担することになります。

小括

このように、自己募集型のソーシャルレンディングにおいては、匿名組合出資権利の募集・私募との関係(イメージ図の左側)では金商法が、金銭の貸付けとの関係(イメージ図の右側)では貸金業法が適用されることから、当該事業を行う企業は、必ず金融商品取引業と貸金業の登録を受ける必要があります。新規にソーシャルレンディングを行おうとする事業者は、まず貸金業の登録を受け、そのあとに金融商品取引業の登録を受ける、という順序での運用が採られています。

また、一般に、ソーシャルレンディングは、FinTech(金融と情報通信の融合分野)の一類型であるといわれます。しかし、ファンド運営業者と資金提供者の間の関係はインターネット上ですべてのやり取りが完了するものの、その裏側であるファンド運営業者と資金の借り手との関係は、ファンド運営業者と借り手との間の借り手の事業計画や貸付条件に関する協議、担保となる資産の査定、ファンド運営業者による借り手へのモニタリング、借り手がデフォルトした場合の強制執行や担保実行など、リアルな世界でのやり取りが多くあるところです。

以上が、ソーシャルレンディングの流れや金融レギュレーションとの関係での各行為の位置づけになります。ただし、これまでの説明は、ソーシャルレンディングにおいて行われてきた重要な運用について1点捨象しています。それが資金の借り手の匿名化・複数化の運用です。次回のMEMOでは、「ソーシャルレンディングの匿名化・複数化の運用とは何か?」について説明することにしましょう。

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